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距離を乗り越えて

相模原市A様邸
DESIGN

神奈川県相模原市に竣工したA様邸。弊社は設計監理を担当しました。

通常は名古屋を中心とした地域で活動する我々が、なぜ神奈川県相模原市かと言うと、これにはこんな経緯が… 

 

A様との最初の出会いは、北名古屋市の西春駅前プロジェクト。

ご家族でコンセプトルームを見学され、注文用地を検討されることになったのがそもそものきっかけでした。 お二人が家を建てるために相当な勉強をされていることは、その相談内容の具体性や真剣さから、すぐにわかり、その後は理想の住まいについて、何度も話し、プランを描き、また話し…を繰り返し、時間をかけてやりとりを深めました。

 

 しかしながら決断までには至らず、西春駅前の土地はキャンセルに。

 

その後、どのくらいたってからでしょうか。A様からお電話をいただきました。

 

 あれから体調を崩し、家探しを一旦中断したこと。ご主人の転勤により、神奈川県相模原市に転居したこと。そして、引っ越し先で家を建てようと土地探しを始めていること。検討している土地について、いろいろと迷っていること。

それから、第三者の立場での意見を求められました。

 

 久しぶりの電話でA様の予想以上の状況の変化を知り、とても驚きましたが、一度は膝を突き合わせた仲、こちらで分かり得ることは相談に乗りました。特に土地購入に際しては、気をつけなければならない点がいくつかあります。例えば分譲地として開発された土地で、検討段階で周辺に建物が建っていない状態の土地は、どこを見ても日当たりがよく広々として見えますが、家が建ち並んだ状態を織り込んだ上で検討しなければなりません。A様から送られた土地情報と写真を元に、将来の近隣関係や日当たり等を予測し、その土地ならどんな家が建つのか、簡単なシミュレーションを、判断材料としてフィードバックしました。 

こういったプロセスを経ての土地選びは、普通の不動産会社ではフォローしない(できない)部分でありながら、住宅建設においては最も重要な部分だと思います。

 

そんなやりとりをしているうちに、A様から「できれば設計をしてもらえないか」との相談が。土地検討と同時進行で10社以上にプランんを描いてもらっていたけれども、納得のいくプランが出てこなかったとのことでした。以前こちらでやりとりした経緯があるので、他社の表面をサラリとなでるような提案は、A様にとってはいささか物足りないものとなったのかもしれません。

それにしても、10社のプランを見た後で、ライブネットのプランがいいと言って下さったことは、我々にとってはうれしく、誇らしいことでした。

 

そうして、相模原での家づくりは始まりました。 

本来なら設計施工が信条ですが、さすがにこの距離間ではムリ。施工は地元の工務店にお願いし、我々は設計監理を担当することになりました。

 

相模原と名古屋をつなぐのは電話とメール、そしてスカイプ。 

スカイプを使えば、パソコン画面とはいえ、お互いの顔を見てやりとりができるため、電話では伝わりにくいニュアンスも伝わりますし、時間的にも体力的にも、お互いの負担を抑えられるのがうれしいところです。また、メールでは、伝えたい内容を文字に変換することで、頭の中が整理されて問題が明確になりますし、冷静に考える時間を持つこともできます。

日曜の夜は、スカイプで打ち合わせ。その後ご夫婦で話し合った内容や、新たに生じた疑問などは、メールで伝えてもらいます。そしてこちらから新たな提案やプランをメールして目を通してもらい、また日曜の夜に話し合う、という段取り。もちろん、急を要する質問や確認の際には、電話で話し合いました。

 伝達ツールを使い分けることで、内容的には直接お会いして打ち合わせをするのと全く同じ、というよりも、むしろそれ以上のやりとりができたかもしれません。

 

プランニングにあたって、まずA様から『A家住宅要望書』が渡されました。住宅の構造、コンセプト、意匠、使い勝手に至るまでの要望が箇条書きにされ、また、数々のイメージ画像が貼付された要望書からは、A様の住宅建設に対する並々ならぬ熱意が伝わってきました。その要望書が設計の核となり、A様邸は完成しました。

施工が別会社ということで、いつもとは勝手が違う部分も多くあり、現場の職人さんとの打ち合わせは特に入念に行いました。

勝手が違うのは職人さんたちも同じ。見慣れない図面を読みながらの作業は、さぞかし骨が折れたことと思います。 考え方の違いや習慣の違いを感じつつも、図面や打ち合わせを通じて意思疎通ができ、完成形を共有して家づくりができたことは、我々にとっても良い経験となりました。

 

リビングに造り付けた棚は、どこに何を置くのか、置きたいものから考えた棚。

「内装はクロスのみではなく、一工夫あるものとしたい」というリクエストを元に、リビングと隣り合う和室天井にはレッドシダーを。ランダムな木の風合いがほどよいアクセントに。

将来2室に分離できる広さを持つ主寝室には、「屋根裏部屋を有すること。屋根裏部屋へは固定階段で上がれること」という要望を元につくられたロフトスペースも。

 

工事着工から完成までに届いたメールは87通。その中身はいつも真剣で慎重で、時には不安も伝わってきました。些細な事柄にも正面から向き合い、ひとつずつ疑問を解消し、納得しながら進んでいくA様の姿勢が、とても印象的でした。

 

 

「設計者のテイストを表す(特徴を持つ)家を」

 要望書の最後に、こんな一言があったのですが、改めて考えてみると、エルズハウス特有のデザインや形があるわけではありません。居住者の要望に出来るだけ沿い、かつ空間を最大限に使って、実用と遊びを包括しようと試みようとするところに我々の特徴があるのではないか、と思います。そういった意味でA様邸は、とてもエルズハウスらしい家に仕上がったのではないかと考えています。

〈A様からの入居後のおはなし〉

 

入居されて半年ほど経ったA様から、改めて新居のご感想を伺いました。

 

工務店での「お宅拝見」で何度か自宅を公開し、多くの方が見学されているそうで、見学されたみなさんは、想像以上の空間の広がりに驚いていらっしゃるとのこと。「入居後も、折りにふれて『建ててよかった』と満足しています」とのお言葉をいただき、我々も嬉しい限りです。

ただし、コンセントの位置や数については「やっぱりこうしておけばよかったな」と思うところもあるとのこと。実際に暮らし始めてから予想とは違うことに気付くことも多いのですが、私たちとしても、計画時にもっともっとできることがあったのではと、反省しています。

 

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