子供部屋について考える
家をつくる、買う人の動機の多くが、子どもの誕生・成長にあります。
ほとんどの人が「子どもが生まれるので環境を整えたい」「今住んでいる賃貸アパートが手狭になった」「そろそろ子ども部屋を与えてやりたい」という理由で動き出します。この時、問題になるのは家の広さと部屋数です。
多くの人の動機が「子どものため」でありながら、子ども部屋に対する要望はあまり具体的ではありません。よく聞かれる要望といえば、「とりあえず子どもの数だけ部屋があれば」と、至ってシンプル。それ以上でも以下でもないケースがほとんどです。
家づくりを考える時期は、まだ子どもが幼く、本当の意味で子ども部屋を必要としない年齢であることが多いため、子ども部屋に対する具体的なイメージがないのも無理はありません。ただし、プランニングの際には、これからの子どもの年齢と、成長に沿った部屋の与え方を考えておく必要があります(ただスペースを確保しておくだけではもったいない!)。
子どもの人数、性別が同じなのか違うのか、年の差などで、子ども部屋のプランニングの手法は変わりますが、ここでは子どもがまだ個室を必要としない年齢の場合を考えてみます。
どこまでコンパクトにできる?
限られた敷地を最大に活用して、豊かな空間をつくろう!と、ああでもないこうでもないと苦労する中で、〈子ども部屋イコール最低6帖、部屋数は子どもの人数分〉などと単純にプランに落とし込んでしまっては、もったいない限り。単純にスペースを割り振っていたら、家全体の空間・スペース配分のメリハリが失われてしまします。
そんなときはまず、「子ども部屋は最低6帖」という固定観念を捨てます。
例えば、3帖あればベッド・収納・机ときれいに納まり、子ども部屋として成立します。2段ベッドを上手く使ったら、4.5帖もあれば2人分の子ども部屋ができます。固定観念をなくしてしまえば、半分の3帖でも、ちゃんと子ども部屋はできるのです。
このようなコンパクトな子ども部屋をつくる場合に必要なのは、プライバシーを保てる空間にすること。子ども部屋には、広さよりもプライバシーの方が求められることの方が多いと言えるからです。この場合、プライバシーさえ保てれば、3帖でも立派な“部屋”になります。
豊かな空間づくりの際は、空間の役割をしっかり捉え、どこまで贅肉をそぎ落とせるかを思考することがポイントになります。子ども部屋を3帖にしなくてはならないのではなく、「3帖でも成立する」という視点を持つことも、空間を活かす設計には必要です。
使い勝手のいいオープンスペース
ある年齢までは独立した部屋にせず、他の空間と連続したオープンなスペースを子ども用にしておくのもいいでしょう。
たとえば、2階が家族のプライベートゾーンであれば、主寝室以外は、広々としたホール、子どもの遊び場としておきます。子どもが遊んでいるとき、勉強している時、友だちが集まったときでも、階段を通じて1階のキッチンにいるお母さんと、互いの気配を感じられる、連続した空間です。
オープンスペースの使い勝手の良さは、区切ってしまっては得られないものです。子どもが個室を必要とする期間は、意外に短いですから、それまでの間は、ゆとりある空間を楽しむことを優先させるのもいいと思います。
将来の使い方を想定しておく
間仕切りのないオープンスペースでスタートさせる場合は、将来の間仕切り方法、間仕切りをした後の使い方をしっかり想定しておきます。出入り口、窓の位置、照明、コンセントなど、後で不便を感じることのないように計画をしていきます。
設計者からひとこと
子どもは、いずれ自分の部屋が欲しいと自己主張するようになります。
子どもが主張もしないうちから予め用意するのか、子どもの願いを少しずつ叶えていくのか。どちらが楽しいか。
後者の場合、子どもは自分の希望がカタチになる喜びを味わい、「ありがとう」と感謝の気持ちを強く持つこと間違いなしです。
家を建てたら終わりじゃありません。
子どもの成長に合わせて、子どもと一緒に少しずつ仕切りを設けていって、子どもが巣立ったらまた、仕切りを外して使う。
家族の成長とその時々の構成やスタイルに合わせて、変化していくものだと思います。
定期点検などでお宅へお邪魔すると、子どもの誕生と共に家を建てた人が、将来子ども部屋になる2階の洋室2部屋は、未使用状態のままで暮らしている例が多く見受けられます。自分たちの主寝室すら使わず、1階のLDKと和室で暮らしている夫婦も。
和室で家族3人川の字になって寝ているそうです。
そういう家族を見ていると、親も子も、ベッタリできるうちは存分にベッタリを楽しむのもいいな、と思います。
部屋でひとり黙々と勉強をするのは、せいぜい高校受験を迎える時期くらいから。大学で親元を離れるとすれば、個室が必要な期間はたったの4・5年ということになります。子ども部屋と称して、わざわざ6帖の独立した部屋をつくるのは、空間の使い方としては、ずいぶんもったいない話なのかもしれません。
もっと自由に、もっと楽しい暮らし方に、空間を活かすプランニングを目指したいと思います。