2度目の移転計画
再び相生町へ
徳川一丁目の事務所から目と鼻の先。我々は再び相生町へと出戻ることになる。
今度の建物はちょっと変わっている。
道路の反対側の屋根の先では、今でも鬼が睨みを効かしている。
外壁は漆喰の剥離を手っ取り早く補修したのだろう、上からうす茶色の鋼板で覆ってある。
この鋼板のせいで、外観が変わり果てているが、この建物は江戸末期に建てられた味噌蔵だという。
中はほとんど当時のまま。
見たところ、これまで大々的な改修はせず、痛んだらその都度補修を繰り返して今に至る、といった感じだ。
味噌蔵としてのお役目が放免となってからも、ずっと倉庫としてのみ使用されてきたらしく、水廻り設備はない。電気は通してあるようだったが、あくまで天井にぶら下がる旧式の蛍光管のためだ。
とてもこのままの状態で事務所としての使用に耐え得るとは思えないが、少し手を入れれば、かなり快適な空間に化けそうなポテンシャルを秘めている。
ここなら事務所兼資材置き場としても、ギャラリーとしても使えそうだ。
これまでよりも広く、自由に使える空間が手に入る。
でもそれ以上に魅かれたのは、これが江戸時代の建物だということだった。
街並保存地区の指定エリア外に、何気ない顔をして歴史的建築物がある。
江戸末期築の建物が今も現役で、物件情報に「倉庫物件」として普通に紹介されていたという、信じがたい事実。
実に面白いではないか。
「要補修」「インフラ整備なし」さえどうにかすれば…。
移転決定
この移転構想、メンバーは満場一致で賛成。
時間を気にせずに自由に建物を使える気楽さと、資材を置くことができる便利さが高ポイントだったようだが、やはりそれ以上に皆、この建物の面白さは放ってはおけなかったようだ。
「10月に移転するぞ!」と決めたのが6月。
4ヶ月の猶予があることと、自分たちのこととあって、「まぁ何とかなるでしょう」と、多少楽観的に決めてしまったことは否定できない。